ハンドドリップでのおいしい淹れ方とは? コツも珈琲店が解説!

コーヒーにはいろいろな淹れ方がありますが、現在最も多く行われているのがハンドドリップ。手軽に本格的なコーヒーを淹れられ、後片付けも簡単なのが魅力です。
ここでは、当店で提供しているコーヒーの淹れ方をご紹介しますが、これが絶対というわけではありません。味の調整の考え方もご説明しますので、自分がおいしいと思うコーヒーに近づけるようにチャレンジしてみてください。


ハンドドリップにはどんな器具が必要?

最低限必要なもの

ドリッパー … 台形のものや円錐形のものがあり、大きさも様々です。
当店では主にハリオV60の01タイプ(1~2杯用)を使っています。

ペーパーフィルター … ドリッパーの形や大きさに合ったものを使います。

あった方がいいもの

ケトル … お湯をすばやく沸かせる電気ケトルは便利ですが、沸騰直後(100℃)のお湯でコーヒーを抽出するのはNG。また、注ぎ口が大きいとゆっくり注湯できません。
注ぎ口の細いコーヒー用のケトルに移しかえ、お湯の温度が90℃前後になってから淹れるのがベターです。当店では細口で温度調節のできるコーヒー用の調温ケトルを使用しています。

サーバー … 1杯分ならドリッパーを直接カップの上に置いても淹れられますが、できたコーヒーの量が見えにくかったり、濃さが始めと終わりで違っていたりするので、サーバーに落としてカップに注いだ方がよいでしょう。

できれば欲しいもの

スケール … タイマー付きのものがあると便利。なければスマホのタイマーでも代用できます。
家で淹れるコーヒーの重さをいちいちスケールで計る人はあまりいないと思ますが、淹れ方の説明をする上では必要なので、可能なら使っていただきたいです。
当店では豆量、湯量、抽出時間などを揃えて味を一定にするために使用しています。

グラインダー(コーヒーミル) … コーヒー店でも豆を粉に挽いてもらうことはできますが、豆のほうが粉よりも鮮度を保てますので、飲む分だけその都度挽くのがベスト。
また、挽き目による味の調整もできます。

ハンドドリップに適した粉の挽き目はどのくらい?

細かく言えば豆の種類、焙煎度、出したい味の傾向によっていろいろですが、「中挽き」を基準として始めてみましょう。
「中挽き」といってもグラインダー(コーヒーミル)のメーカーや型によってさまざまですが、だいたい見た目で「グラニュー糖の粒より少し大きめ」の粉にするとよいと思います。
粉を購入する場合はコーヒー店で「ペーパードリップ用」と言って挽いてもらってください。

ハンドドリップでのおいしい淹れ方

では、ここからは当店で淹れている手順に沿って、1杯分の淹れ方をご紹介します。

① 豆の重さを計る

使用するコーヒーとお湯の量は1:15程度を基準とします。
当店では200 cc (200グラム)のお湯を使用しますので、コーヒー豆は約13.3グラムとなります。多少の誤差は気にしません。
粉から淹れる方は、計量スプーンのどのくらいまで粉を入れればよいか事前に調べておくとよいでしょう。ただし、計量スプーンはメーカーによって容量が違います。
また、焙煎度によって同じ体積でも質量が違ってくるので注意が必要です。

② 豆をグラインダーで挽く

当店ではカリタの「ナイスカットG」を使用しています。ダイヤルは3.5~4です(豆の状態によって変えています)。

③ ドリッパーにペーパーフィルターを入れる

ペーパーフィルターの端の合わせ目のところを折ってドリッパーにはめます。
当店ではフィルターにお湯をかける「ベーパーリンス」を行いますが、別にやらなくても味にはほとんど関係ないと思います。
サーバーにはお湯を通して温めておいたほうがよいですが、コーヒーを落とす前にお湯を捨てることを忘れないように!(やりがちです…)

④ 粉をドリッパーに入れる

左右にゆすって表面が平らになるようにします。

⑤ 粉全体にお湯をかけて蒸らす

スケールを0にしてタイマーをスタート。
はじめは中心から円を描くようにお湯をゆっくり注ぎ、粉全体を湿らせます。
だいたい30~40 cc注ぐと、サーバーに最初のコーヒーが少し落ちてきます。新鮮なコーヒー豆だとガスが出て全体がドーム型に膨らんできます。

⑥ 何回かに分けてお湯を注ぐ

30秒たったら、何回かに分けてお湯をゆっくり注ぎます。
当店では次のようにしています。
30秒後から…80グラムまで注ぐ
 → 1分後から…120グラムまで注ぐ
 → 1分30秒後から…160グラムまで注ぐ
 → 2分後から…200グラムまで注ぐ
30秒ごとに40 ccずつなので覚えやすいと思います。
2分40秒ぐらいになったらドリッパーをサーバーから降ろします。

⑦ サーバーのコーヒーをかき混ぜてカップに注ぐ

サーバーに落としたコーヒーは最初と最後で濃度が異なっているのでよく攪拌してください。
また、カップは事前にお湯を入れて温めておくとおいしく飲めます。

ハンドドリップでおいしく淹れるコツ

ここまで紹介した淹れ方の中で、これだけは守ってほしい、というポイントを3つお伝えします。

① 沸騰したお湯は使わない

沸騰したお湯では過抽出となり、コーヒーの成分のうち苦みや渋みが多く抽出されてしまいます。

② 蒸らし時間をとる

お湯の1投目の後、粉にお湯がしみ込んで抜け道ができるまで少し待ちます。
お湯がしみ込んでいない部分が残ると、抽出が十分に行われません。

③ 抽出を終える時間を守る

抽出に時間をかけすぎると過抽出となってしまい、苦みや渋みが出やすくなります。
ドリッパーからお湯が落ちきっていなくても3分より前にサーバーから降ろすようにしましょう。

ハンドドリップで自分好みの味に調整してみよう

味の好みは人それぞれです。基準となる淹れ方をマスターしたら、自分好みの味に近づけるように調整してみましょう。

① 粉の量、お湯の量を変える

粉を多くすると濃くなり、お湯を多くすると薄くなります。(当然ですね!)

② 粉の挽き目(粒度)を変える

粒度が細かくなるとお湯の抜けが悪くなって抽出に時間がかかり、粉がお湯に触れている時間が長いので濃くて苦味の強い味になります。
反対に粒度が粗いとお湯が早く抜けて抽出時間は短くなり、薄くてさっぱりとした味のコーヒーになります。

③ お湯の温度を変える

浅煎りの豆は抽出されにくく、深煎りの豆は抽出されやすい傾向にありますので、湯温を変えて調整します。
浅煎りの場合で92~96℃、深煎りの場合では84~88℃くらいが飲みやすくなると思います。

ハンドドリップで美味しいコーヒーを淹れよう

ネットで検索すると、いろいろな人がハンドドリップの方法を説明したり動画を出したりしています。多すぎていったいどれが正解なのかわかりにくいですよね。
結論を言えば、コーヒーの味の好みは人それぞれなので、自分がおいしいと思うコーヒーを淹れられればそれが正解。つまり飲む人の数だけ正解があるということです。
手軽に家庭でできるハンドドリップですが、一方でとても奥が深く、世界的に競技会が行われるほどの技術でもあります。
そこまでの技術を極めたいわけではないにしても、自分の好みの味をハンドドリップで出せれば、よりコーヒーの楽しみが広がるでしょう。ぜひトライしてみてください。